コラム:フレックスタイム制の仕組みと法改正後の時間外労働の算出方法を紹介
投稿日 : 2019.11.27
柔軟な働き方ができるとして、一時期、注目を集めたフレックスタイム制。働き方改革を進めるに当たり、フレックスタイム制の導入を検討している会社も増えているようです。
この記事ではフレックスタイム制とはどのような仕組みなのか、時間外労働をどのように考えるのか紹介していきます。
目次
まずは、フレックスタイム制の概要と仕組みについて見ていきましょう。
フレックスタイム制とは労働者が自由に出社時間と退社時間を決められる「変形労働時間制」の一つのスタイルです。勤務時間を固定せずに、一定期間の総労働時間の範囲の中で、労働者が各自で労働日や労働時間を自由に決めることができます。
仕事と生活の両立を意味する「ワーク・ライフバランス」を図るもので、業務効率や生産性の向上も期待できます。
ですが、勤務時間を完全に自由にするフレックスタイム制は、あまり一般的ではありません。多くの会社では、「フレキシブルタイム」と「コアタイム」を設定しています。
フレキシブルタイムとは、会社が所定した時間帯の範囲であれば好きな時間に出社、退社できる時間帯のことです。
たとえば、朝6時から10時までがフレキシブルタイムの場合、6時に出社しても10時に出社しても大丈夫ということです。退社していい時間帯も幅を持って設定されていることが多く、自分のライフスタイルに合わせて調整できます。
コアタイムとは、必ず勤務しなければならない時間帯のことです。コアタイムが10時から15時に設定されている場合は、遅くとも10時には出社し15時までは働かなければいけません。会社によってはコアタイムを作らず、すべてフレキシブルタイムにしているケースもあります。
フレックスタイム制で働く場合、通常の勤務時間を固定した働き方と労働時間や残業時間の考え方が変わります。
フレックスタイム制では、1週間や1ヶ月といった期間で総労働時間を決め、その範囲で自由に日々の働く時間を調整します。なお、総労働時間を決める期間のことを「精算期間」と言います。
精算期間の上限は法律で決められています。2019年4月に法改正が行われ、精算期間の上限が1ヶ月から3ヶ月に変更されました。精算期間が3ヶ月に変更すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
たとえば6~8月を精算期間とした場合、子供の夏休みに合わせて労働時間を調整できるようになります。つまり、6月に長く働く代わりに、夏休みのある8月は労働時間を短くすることができるのです。精算期間を長くすることで、より柔軟な働き方ができるようになるといえます。
フレックスタイム制では、残業代の考え方も異なります。残業代は発生するのか?、また、どのように計算するのかを見ていきます。
フレックスタイム制の場合、精算期間の総労働時間を超過すると残業代が発生します。
ただし、精算期間が1ヶ月を超える場合、次のいずれかを満たしていると残業代(割増賃金)が発生します。
この条件により、精算期間を3ヶ月にした場合でも、過度に繁忙月に偏った労働時間とすることはできなくなります。
フレックスタイム制では、1日8時間/1週40時間という法定労働時間を超えて働いても、残業には当たりません。「清算期間」のうち「総労働時間」を超えた時が残業代の対象となります。
なお、2割5分の割増賃金となるのは、法定労働時間の総枠を超えた場合です。(法定労働時間の総枠は以下の表を参照)
清算期間の暦日数 | 週の法定労働時間数が40時間の場合 |
31日の場合 | 177.1時間 |
30日の場合 | 171.4時間 |
29日の場合 | 165.7時間 |
28日の場合 | 160.0時間 |
清算期間の暦日数が28日で、実際の労働時間が180時間だった場合。
180(実際の労働時間数)-160(法定労働時間) = 20時間が2割5分増の残業代の対象となる
未払いの残業代がある場合は、未払いの証拠となるものを集めて弁護士などの専門家に相談しましょう。証拠がなければ未払い請求では勝ち目がありません。始業・終業時刻を証明できる証拠を残しておきましょう。
また、未払い賃金は2年で時効になります。遡って2年以内の未払い分しか請求できないことにも気をつけてください。
フレックスタイム制は働き方改革を推進する効果的な手段ですが、制度が複雑なためトラブルの原因にもなりかねません。もしフレックスタイム制で働いている方は、どのようなルールが制定されているか就業規則などをしっかりチェックしておきましょう。
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