コラム:カーボンニュートラルとは?どんな取り組みが行われているのか?
投稿日 : 2021.09.24
メディアで「カーボンニュートラル」という言葉を聞く機会が増えてきましたが、その意味をご存知でしょうか。菅総理が2020年10月の臨時国会で「2050年カーボンニュートラル宣言」をおこなったことで大きな注目を集めました。
今回はカーボンニュートラルについて、その意味や私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか紹介していきます。
目次
カーボンニュートラル(carbon neutral)とは、本来「植物や植物由来の燃料を燃焼してCO2が発生しても、その植物は成長過程でCO2を吸収しており、ライフサイクル全体(始めから終わりまで)でみると大気中のCO2を増加させず、CO2排出量の収支は実質ゼロになる」という環境に関する考え方を表した用語。
一方で菅首相は所信表明演説で次のように宣言しました。
「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」
つまり、日本が目指しているカーボンニュートラルとは、CO2に限らず、メタンやN2O(一酸化二窒素)、フロンガスなど「温室効果ガス」を含めた考え方といいます。また、カーボンニュートラルの特徴として「排出量をゼロ」にするのではなく「全体としてゼロ」にするところ。
排出を完全にゼロに抑えるのは現実的に難しいため、排出せざるをえない分については同じ量を「吸収」また「除去」し、差し引きゼロにすることが重要なのです。「ニュートラル(中立)」という言葉を考えると、排出を減らすのはもちろん、正味ゼロにするという考え方も忘れてはいきません。
菅首相が宣言を出したことにより、法律を定めることで国としてのカーボンニュートラルも推進しています。その中核となる「環境基本法」や「地球温暖化対策推進法」のほか、2021年3月には「地球温暖化対策推進法」も改正されました。
法の改正には「2050年カーボンニュートラル」実現のための基本理念の新設、脱炭素化の取り組み(地域の再生可能エネルギーの活用など)の促進、企業の脱炭素経営を推進する内容が盛り込まれています。
ほかにもカーボンニュートラルに向けた政策として注目されているのが「カーボンプライシング(CO2の価格づけ)」です。排出されたCO2の量に応じて金銭的な負担を課す制度で、いわゆる炭素税といわれるものです。国家間で排出量取引制度なども検討されています。
カーボンニュートラルは一人ひとりの意識が重要ですが、最も期待を集めているのがCO2の排出量が多い産業界での取り組み。電力会社による再生可能エネルギーの導入や、CO2を排出しない電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発など、急速にカーボンニュートラルに関連する取り組みが行われています。
どのような取り組みがあるのか見ていきましょう。
カーボンニュートラルLNG(CNL)とは、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、新興国等における環境保全プロジェクトにより創出されたCO2クレジットで相殺すること。これにより、地球規模では天然ガスを使用してもCO2が発生しないとみなされています。
この取り組みは、地球規模での温室効果ガス削減・排出抑制に加え、現地での雇用の創出や生物多様性の保護等、SDGsの目標にも関連しており、持続可能な社会の実現に貢献します。
カーボンニュートラルの代表格と言われるのが、植物由来の燃料である「バイオディーゼル燃料」。日本では広く開発・普及が進められています。
熊本県では、ある会社が家庭で出た使用済みの天ぷら油を回収して、環境負荷の少ない経由代替燃料を生産。食物由来の廃食用油を原料とすること、カーボンニュートラルの地産地消型エネルギーを提供しています。
建設業界で行われている取り組みが「カーボンリサイクル・コンクリート」と呼ばれる環境に配慮されたコンクリートの仕様。工場の排気ガスなどから回収したCO2を原料に製造されたコンクリートのことで、その名の通りCO2のリサイクルを実現しています。
鉄鋼業界では石炭の代わりに水素で製鉄を行う「ゼロカーボンスチール」の研究開発が進んでいます。鉄鋼業は国内で特にCO2の排出量が多い業界で、国際社会からCO2排出量の削減を強く求められていました。その要望に応えて環境に優しい鉄作りに向けて舵を切り始めたのです。
今や様々な産業でカーボンニュートラルが注目を集め、大企業を中心に新たな取り組みや技術革新が行われています。国もその取り組みの後押しをしており、今後大きな市場となっていくのは間違いないでしょう。これまで「環境ビジネス」と言えば「儲からない」というイメージが強かったものの、これからの環境ビジネスは社会に貢献しながらビジネスの成長も期待できるのです。ぜひカーボンニュートラルに興味を持った方は、関連企業について調べてみてはいかがでしょうか。
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