コラム:スマートファクトリーとは。注目される背景とメリット
投稿日 : 2020.05.04
AIやIoTといった最新技術を活用して業務を効率化した「スマートファクトリー」が注目を集めています。製造業界では様々な企業がスマートファクトリー化を推進しており、次の時代のものづくりを目指しているのです。スマートファクトリーの実現は、工場で働く人だけでなく、モノづくりに関わる全ての人の働き方に影響を与えることでしょう。
この記事では日本でスマートファクトリーが注目されるようになった背景と、スマートファクトリーの実現により私達の生活や働き方がどのように変わるのかを紹介していきます。
目次
そもそもスマートファクトリーが注目されるきっかけになったのは、ドイツ連邦政府がものづくり革新プロジェクトとして推進している「インダストリー4.0」にあります。ドイツは国を挙げて産学官の連携を深め、ITを活用した新しいものづくりの理想像を提示しました。2015年には、具体的に必要となる技術やロードマップも発表したことで、より活動が具体化し、世界からの注目を集めるようになったのです。様々な課題を抱える日本の製造業も、これを見習いグローバルでの競争力を伸ばそうとしたことが日本のスマートファクトリー化の始まりです。日本の製造業がどのような課題を抱えているのか見ていきましょう。
少子高齢化による労働人口の減少は、あらゆる業界で問題になっていますが、製造業もその例外ではありません。経済産業が毎年発行している「ものづくり白書」を見ても、人材確保について「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」と応える企業の割合が増加しています。これまで人材不足への対策は主に「採用力の強化」でしたが、ここ近年で「自動機やロボットの導入による自動化・省人化」や「IT・IoT・ビッグデータ・AIなどの活用による生産工程の合理化」という対策に期待が寄せられているのです。スマートファクトリー化は、人手不足で悩む工場の救いの一手と言えるでしょう。
ヘンリー・フォードが大量生産方式を発明したことにより、車が急速に普及し一挙に車社会が到来しました。それ以降、ものづくり業界は少ない品目を大量生産するのが主流になっています。しかし、顧客のニーズは徐々に多様化してきており、「自分だけの製品」を求めるようになってきました。向上には様々な製品を少量ずつ生産することが求められているのです。これまでは人力でそのようなニーズに応えるため、様々な改善活動が行われてきましたが、それも限界を迎えています。これから更に多様化していくニーズに応えるためには、テクノロジーによる業務の効率化が求められているのです。
では、スマートファクトリー化でものづくりの現場はどのように変わるのでしょうか。メリットについて見ていきましょう。
生産性の工場のためには、現状の分析や改善点の究明が必要不可欠です。スマートファクトリー化によりIoTやセンサーが導入されれば、産業用ロボットや製造設備の稼働状況を常に計測できます。どの作業が生産性が低いのか、どうすれば生産性を挙げれるのか詳細に把握できるため、より効果的な改善が行なえます。
工場では大量のエネルギーが消費されています。作業員とロボットが快適に業務を行うための空調管理や、ロボットを長時間稼働させるための電力などを合わせると相当なエネルギー量になるのです。スマートファクトリー化することで、エネルギーの管理もできるようになり、それぞれのロボットや設備がどれくらいエネルギーを使っているかが一目瞭然になります。それにより、余分にエネルギーを使用している場合は供給を下げるなどして、エネルギー効率を上げるため環境にも優しいものづくりが行なえます。
スマートファクトリー化することで、従業員ごとの作業効率や熟練度なども全てデータベース化されていきます。蓄積されたデータを分析することで、技術やノウハウを体系化でき、技術の承継が容易に行えるようになります。技術承継や教育は、人材不足に悩む工場にとって大きな悩みの一つでしたが、データを活用すればこれまでより教育にかけるコストと時間を大幅に削減することが可能です。
マスカスタマイゼーションとは、大量生産と同じ生産性でカスタム製品を作る概念や仕組みのことです。「インダスタリー4.0」の中で、理想のものづくりの姿の一つとして取り上げられています。現在、カスタム製品は販売価格が割高になってしまいますが、マスカスタマイゼーションが実現すれば、より低価格でカスタム製品が提供されるようになります。それにより、ニーズが多様化している今の社会にマッチしたものづくりが可能になるでしょう。
スマートファクトリーが実現すれば、工場で働く人に求められるスキルや働き方は大きく変わります。今後ものづくり業界で働きたい方は、どんなスキルが必要になるのか、予め把握しておいてはいかがでしょうか。
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