コラム:有休休暇が権利から義務に。2019年の法改正で何が変わったのか解説
投稿日 : 2019.12.25
有給休暇が余っているにも関わらず、仕事が忙しくなかなか会社に申請できない方もいると思います。実は2019年の法改正により、有給休暇をとらせることが会社の義務になっていることをご存知でしょうか。社員に有給休暇をとらせなければ、会社が法に問われることになるのです。
今回は改めて有給休暇がどのようなものか紹介します。また、法改正によってどのような点が変わったのか解説するので参考にしてください。
目次
まずは有給休暇がどのようなものか見ていきましょう。
有給休暇は労働者に与えられた休む権利であり、法律で定められています。法律で定められた権利のため、労働者から有休を申請された企業は原則断ることはできません。ただし、労働者なら誰もが有休を付与されるわけではありません。有休を取得するには次の条件を満たす必要があります。
・仕事を開始してから6ヶ月継続して雇われている
・全労働日の8割以上出勤している。
2つの条件を満たすことで、年に10日の有休が付与されます。つまり、入社してすぐの人や、会社をよく休む人は有休をもらえません。ちなみに勤続年数が長くなるにつれ、付与される有休は増えていき、6年半勤めると年に20日の有休が付与されます。1年間で全ての有休が使えない場合は次の年に繰り越せますが、2年間の有効期限があるため、一度に保有できる有休は最大で40日となります。
有休が付与されるのは正社員だけではありません。派遣やパート、アルバイトでも有休は取得できます。ただし、正社員に比べて付与される有休は少なくなります。また、出勤頻度が高いほど付与される有休も多くなります。
有休は会社に買い取ってもらうこともできます。ただし、お金が欲しいからといって有休をとらずに買い取ることはできず、次のいずれかの場合にのみ買い取ってもらえます。
①有休の期限が迫っていて、どうしても有休を消化できない場合。
②退職が決まって、次の会社の入社日も調整できず、有休を消化できない場合。
③付与された有休が法定日数を超えていて、有休を消化できない場合。
有休は労働者の権利ですが、必ずしも好きなタイミングで取れるとは限りません。企業にも時季変更権という権利があり、有休を取られることで正常に業務が運用できない場合は、有休を別日にとってもらうことが可能です。例えば繁忙期や重要な仕事の最中に有休を申請された場合は時季変更権が使えます。有休を申請する場合は、会社の都合や仕事量にも配慮しましょう。
2019年4月より有給休暇に対して法改正が行われました。どのような変化があったのか見ていきましょう。
法改正により従業員に有休をとらせることは企業の義務となりました。年に10日以上の有休を付与されている方は、最低でも5日は有休を取得しなければいけません。
これまでは従業員から時季を指定していたため、従業員が言い出さなければ有休が取得されないままになっていました。しかし、法の改正により、5日の有休をとっていない従業員には企業側から時季を提案してでも有休を取得させなければならなくなったのです。もし、5日の有休を取らない従業員がいた企業には刑事罰が与えられることになります。
今回の法改正の背景には、世界と比べて日本の有休取得率が異様に低いことがあげられます。エクスペディアの「有給休暇国際比較調査」によると、日本は30カ国中2年連続最下位となっています。その理由の一つに「上司が有休をとることに協力的か分からない」ことがあげられています。上司の顔色を伺って有休を取得できない方が多いため、企業側から有休を取得するように提案する必要があったのです。
現在は最低でも年に5日は有休を取らなければいけませんが、それ以上有休をとることも権利なため、会社側は断ることはできません。もしも有休を取得させてもらえない場合は、労働基準監督署に相談しましょう。警察でも対応してくれなますが、労働基準基準監督署の方が専門的に相談にのってくれるはずです。労働基準監督官は、労働基準法については司法警察員(警察官や麻薬取締官のように、捜査や逮捕をする資格のある公務員)と同じ立場にあります。
日本人は世界で最も休みベタであり、そのため法律によって強制的に休みをとらせることになりました。ただし、企業としてもしっかり従業員に休みをとってもらった方が、仕事のパフォーマンスが上がるため、企業にも従業員にも有益な法改正だと言えるでしょう。5日の有休をとるのは当たり前ですが、付与された有休は権利としてしっかり行使しましょう。
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