コラム:不動産投資における損益通算とは?不動産営業が知っておくべき税金の基礎知識を解説
投稿日 : 2022.02.22
不動産投資の営業では、その収益性だけでなく、不動産投資が持つ高い節税効果を訴求することも多いもの。
このため、営業職にはある程度の税金の知識が求められます。
本記事では、不動産営業が知っておくべき税金の基礎知識として、所得税の損益通算について解説していきたいと思います。
目次
損益通算とは、不動産所得と給与所得など、異なる所得のマイナスとプラスを合算することをいいます。
この仕組みを理解するには、まずは所得税全体の仕組みを押さえておく必要があるでしょう。
まず、所得税には総合課税と分離課税があります。
総合課税とは、不動産所得や給与所得など複数の所得をすべて合算して計算するもの。
一方、分離課税とは配当所得や譲渡所得(不動産や株の売却益)などのことで、分離課税に該当する所得は他の所得と合算することができません。
例えば、総合課税に該当する所得であれば、年間の不動産所得の合計が200万円、給与所得の合計が500万円といった場合、合計700万円に対して課税されます。
一方、分離課税に該当する所得の場合、例えば、配当所得で100万円、譲渡所得で500万円あったとしても、配当所得は配当所得で、譲渡所得は譲渡所得で計算することになります。
ある所得がマイナスになった場合、他の所得から差し引くことを損益通算といいますが、この損益通算できる所得は以下の4つに限定されています。
所得の種類 | 内容 |
不動産所得 | 土地や建物を貸付することで生じた所得 |
事業所得 | 事業を営むことで生じた所得 |
譲渡所得 | 土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの譲渡で生じた所得 |
山林所得 | 山林を伐採して譲渡することで生じた所得 |
不動産投資で得た家賃収入などの所得は不動産所得に該当し、損益通算の対象となっていることが分かるでしょう。
例えば、不動産所得で200万円の赤字、給与所得で500万円の黒字だった場合、差額の300万円分のみを所得として計上できるのです。
また、不動産所得や給与所得などが分類される総合課税は累進課税、つまり所得が高くなるほど税率が高くなることも押さえておくとよいでしょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
参考:国税庁
このため、損益通算することで所得を少なくできれば、より高い節税効果を得ることが可能です。
なお、損益通算するには、不動産所得とその他の所得を計算して確定申告する必要がありますが、所得税の確定申告をすれば、自動で住民税が計算される仕組みになっています。
住民税は、一律10%となっているため、上記税率に+10%されることを覚えておくとよいでしょう。
所得税を損益通算をすることで、毎年所得税の還付や住民税の節税効果を期待することが可能です。
特にサラリーマンの方へ不動産投資を訴求する際には、喜ばれることも多いでしょう。
ただし、損益通算にはデメリットもある点に注意が必要です。
というのも、不動産投資で損益通算するということは、不動産投資に取り組んだ結果、赤字になってしまっているということです。
顧客の中には、1棟だけでなく2棟、3棟と取得していきたいと考えている方もいるでしょう。
そうした方にとって、不動産所得が赤字の状態だと、2棟目以降を取得する際に金融機関からの評価が非常に悪くなってしまうということは押さえておく必要があります。
不動産投資では、もう一つ、売却したときに発生する譲渡所得について知っておくようにしましょう。
土地や建物を売却したときに生じる所得は、不動産の譲渡所得として計上されます。
この、不動産の譲渡所得は分離課税に該当し、総合課税とは別に計算しなければなりません。
このため、原則として他の所得とは損益通算できなことになっているのです。
ただし、不動産の譲渡所得は、マイホームの売却など一定要件を満たすことで損益通算できる特例の適用を受けることが可能です。
不動産営業で、マイホームの売買を取り扱うようなケースでは、押さえておく必要があります。
不動産所得の損益通算や不動産の譲渡所得についてお伝えしました。
まずは、本記事の内容を参考に、税金の基礎を押さえて信頼される不動産営業を目指すようにしましょう。
ただし、顧客の所得によっては、法人化を提案したほうがいいといったケースもあります。
所得税や住民税について基本的な仕組みを押さえたうえで、実際に顧客に提案する際には、必要に応じて税理士など専門家を活用していくことが大切です。
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