コラム:不動産の相続税節税対策に警鐘?最高裁の適法判断と不動産業界への今後の影響とは
投稿日 : 2022.04.27
国税当局が相続税路線価による評価を認めず、追徴課税した事例について争われた訴訟で、2022年4月19日に最高裁が上告を棄却し、国税側の処分を適法としました。
今回は、この事例の内容と、不動産業界に与える今後の影響について見ていきたいと思います。
目次
今回判決が出た事例について、簡単にまとめると、以下のようになります。
請求人側は、不動産を購入して「相続税路線価に基づいて相続税を申告」しているだけなので、基本的には適法に手続きをしているといえるでしょう。
ただし、実勢価格と評価額が大きく乖離している場合には必要に応じて再評価することが認められています。
とはいえ、この例外規定の適用には明確な基準がありません。
そもそも路線価は「実勢価格の8割程度」を目安に定めることとされており、ほとんどのケースで実勢価格と評価額に乖離が生じます。
国税当局側の判断で、誰でも追徴課税がなされる可能性があるとすら見えてしまう判決だといえます。
今回の場合、行き過ぎた節税対策が問題とみられています。
具体的には、以下のような点がポイントです。
不動産購入による相続税対策は一般的な手法の一つだといえますが、あまりに行き過ぎた節税対策であったことが問題だったといえるでしょう。
不動産の相続税節税効果としては、以下のようなことなものがあります。
それぞれ見ていきましょう。
不動産の評価において、土地と建物は以下のように評価されます。
相続税路線価とは、土地についた道路に価格がつけられ、その価格と土地の面積を掛け合わせることで評価額を算出できるというものです。
相続税路線価は、1年に1回しか公表されないことから、納税者間の不公平をなくすために実勢価格の8割程度を目安に定めることとされています。
また、建物は固定資産税評価額により評価額が決まります。
固定資産税評価額は、各自治体により、主に固定資産税の課税のために定められるもので、1つ1つの不動産を評価する必要があることから、マンパワーの問題もあり、3年に1回しか評価替えがなされません。
このため、こちらも納税者間の不公平をなくすために、実勢価格のおよそ6~7割程度を目安に定めることとされています。
これらのことから、例えば現金1億円を使って1億円分の不動産を購入した場合、それだけで、相続税の計算において2~3割程度節税できることになるのです。
なお、路線価については以下記事でも解説しています。
また、アパートやマンションなど、不動産を第三者に貸し出した場合、さらに相続税評価を下げることができます。
他人に貸している分、資産としての価値を下げることができるのです。
これは、上記の実勢価格と評価額の乖離に加えて、評価減を受けることができるため、さらに大きな節税効果を得ることができます。
その他、一定の要件を満たすことで適用を受けられる特例の存在もあります。
例えば、被相続人(亡くなった方)と相続人が同居しているなど一定の条件を満たした場合、「小規模宅地の特例」の適用を受けることが可能で、この特例の適用を受けると最大80%の控除を受けることが可能です。
このように、不動産は相続税に対して非常に高い節税効果を得ることができます。
このため、不動産会社などは節税対策として不動産の購入を提案することがありますが、今回の判例により、影響が出る可能性もあるでしょう。
今回の判決による、不動産業界にはどのような影響が及ぶのでしょうか?
上述の通り、不動産は相続税に対して高い節税効果を期待できるため、不動産会社側から節税対策として不動産の購入を提案することも多くあります。
一方で、今回のように、実勢価格と評価額に大きな乖離がある場合に、国税当局側による再評価が行われることになれば、この不動産による節税対策は大きなリスクを負うことになるでしょう。
特に、数億円の不動産を購入するようなケースでは、再評価により巨額の追徴課税がなされる可能性があるのです。
このリスクを排除するためには、最初から路線価ではなく不動産鑑定評価額を元にした評価額で申告・納税することを検討する必要があるかもしれません。
これから不動産業界への転職を考えている方や、現在不動産業界で働いている方は、今回の判例について内容を理解したうえで、提案内容についてもよく考慮する必要があるといえるでしょう。
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