コラム:敷引とは?合法性や民法改正の影響など解説
投稿日 : 2022.08.19
関西や九州など一部のエリアでは「敷引」という言葉が使われることをご存じでしょうか。
関東圏での転職を考えている人でも、全国転勤のある不動産会社に就職した場合、「敷引」のあるエリアに転勤になる可能性もあるでしょう。
本記事では、敷引について解説していきます。
目次
そもそも敷引とはどのようなものなのでしょうか。
基本的な内容を理解するためにも、まずは敷金や礼金について押さえておきましょう。
敷金は賃貸物件に入居する際、入居者からオーナーに支払われるもので、一般的には以下のような役割を果たします。
上記通り、敷金は一般的には退去時に返還されるものであり、預り金のような性質を持つといえるでしょう。
礼金も敷金と同様、入居時に入居者からオーナーに支払われるものですが、礼金はその名の通りオーナーに対するお礼のようなもので、退去時に返還されるといったことはありません。
敷引とは、オーナーが敷金として受け取るものの、その一部については退去日に返還されないというものです。
例えば、家賃の3ヶ月分を敷金として受け取り、その内の2ヶ月分を敷引するといった形となります。
敷引は、関西や九州など一部のエリアで利用されることが多く、関東圏ではあまりみられません。
なお、敷引をする際には、賃貸借契約時に「敷金の一部を返還しない」旨の特約が設けられます。
一般的な感覚としては、敷金は退去時に返還されるもの、と考えられる方も多いでしょう。
敷金については、退去時に修繕費が差し引かれますが、その額等において入居者とオーナーでトラブルになることが多いものです。
そうしたトラブルの多い敷金ですが、敷引はそもそも合法なのでしょうか?
実は、敷金はこれまで慣習的に取り扱われていたのですが、2020年に民法の改正が行われ、敷金の役割について以下のように明文化されています。
「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」
敷引は賃貸借契約時に、敷金の一部を返還しない特約が付される形で契約が結ばれますが、過去にこうした特約が有効なのかどうか裁判で争われたことがあり、最高裁判所の判例で有効とされています。
これは、契約書にその旨が書かれていて、契約者はそのことを理解したうえで契約を結ぶのであるから、有効であるという考え方が取られているのです。
ただし、これは敷引が原状回復のための費用として利用されるものとしたうえで、敷引の額が高額過ぎる場合には無効であるともされています。
なお、上記判例は2011年のものであり、2020年の民法改正の前の判例です。
改正後の民法と照らし合わせて有効かどうかは分かりません。
今後、敷引の有効性について裁判で争われるようなことがあれば、結論が変わる可能性もあるといえるでしょう。
敷引について、高額でなければ有効だが高額になれば無効になることもある旨をお伝えしました。
それでは、具体的にどのくらいの額であれば有効なのでしょうか。
実は、2011年以降もいくつかの裁判において、敷引の額について触れた裁判がなされています。
それらの判例を見てみると、概ね、家賃の3倍程度までであれば高額とはいえないと考えられるようです。
不動産会社で働くことになり、取り扱う物件において敷引を利用することになったときは、そうした判例についても調べておくようにするとよいでしょう。
敷引は一部のエリアで行われている慣習であり、主に関西圏、九州圏で利用されることが多いです。
特に九州で利用されることが多く、長崎県や鹿児島県、熊本県、福岡県で見られるようです。
なお、京都や滋賀県などでも見られますが、九州と比べるとその比率はかなり少なくなっています。
ちなみに、これらの地域においても、敷引が利用されるケースは少なくなっているようです。
敷引についてお伝えしました。
敷引は関西圏や九州圏など一部のエリアで行われている慣習ですが、将来的にそうしたエリアで働くことになったときに、知らなかったといったことのないよう、どのような契約なのか理解しておくようにしましょう。
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