コラム:日本で広まりつつある「ジョブ型雇用」。求職者のメリットは?
投稿日 : 2020.06.26
「新卒一括採用」「生涯雇用」といった従来の日本の雇用形態に代わり、注目を集めているのが「ジョブ型雇用」です。多くの企業がジョブ型雇用を取り入れているため、働く側もジョブ型雇用を前提としたキャリアプランを描くのが賢いと言えるでしょう。
この記事では、ジョブ型雇用がいかなるものか紹介していきます。
目次
ジョブ型雇用を説明するために、日本の従来の雇用形態である「メンバー型シップ型雇用」も合わせて紹介していきます。
メンバーシップ型雇用とは、日本でよく見られる新卒一括採用型の雇用システムです。一般的には総合職と採用して、転勤や異動、ジョブローテーションを繰り返すことで、会社を支える人材を長期的に育成していきます。その特徴は給与体系にも現れており、長期的に働いてもらうため、長く働くほど一律で昇給する年齢給を採用する企業が多いです。また、多額の退職金が受け取れる年功序列型の賃金体系も大きな特徴。長く働いて欲しい会社に、人が合わせている雇用形態と言えるでしょう。
ジョブ型雇用とは、社歴などに関係なく、顕在化されたスキルを重視した雇用形態です。例えば専門スキルを持った人材が辞めた時に、同じスキル持つ人材を採用することなどを言います。スキルを持っていることが前提となるため、最低限の研修しか用意されておらず、スキルの向上は個人に求められます。自ら専門スキルを高めれば、より条件のいい会社を自ら選べるため、新卒で入った会社に長くいるよりも、様々な会社での仕事を通して専門スキルを磨くのが一般的です。
最近はメンバーシップ型雇用を否定する風潮が強くなり、その一方でジョブ型雇用に注目が集まっています。ではなぜ今、ジョブ型雇用が必要なのでしょうか。
メンバーシップ型雇用では、企業もそこに所属する社員も専門スキルが高まりづらくなります。その会社だけで通用するスキルが磨かれてもグローバルの競争に勝つことはできません。その証拠に1989年には「世界の時価総額ランキング」の上位50位に日本の企業は32位がランクインしているだけでなく、トップから5位まで日本企業が独占していました。それが30年後には43位に「トヨタ自動車」がランクインするだけとなっています。日本が平成の30年間で以下にグローバルでの競争力を落としたかが分るでしょう。再びグローバルで戦える力を身につけるため、海外で一般的なジョブ型雇用を取り入れる企業が増えているのです。
AI、IoT、ブロックチェーン、ロボット、ドローン、5G、ビッグデータなど、第4次産業革命とも言われる技術革新に伴い、ITエンジニアやデータサイエンティストなどのニーズが高まっています。以前は、専門的な技術は限られた企業でしか求められていませんでしたが、今や業界や会社の規模に関わらず、あらゆる企業が専門的な人材を求めています。専門スキルを持つ人材をゼロから育てるのは容易ではありませんし、社内に育てられる人間も必要です。そのためジョブ型雇用で、既にスキルを持った人間を採用する必要性が高まっているのです。
日本は少子高齢化により労働力の確保が年々難しくなっています。その解決策の一つが多様な人材を積極的に活用する「ダイバーシティ(多様性)」という考え方です。これまでは採用されることがなかった子育てをしているママや、介護をしている在宅ワーカーも時短で活用する必要性が出てきました。そのため勤務地や勤務時間を限定しながらも、最大限スキルを発揮してもらえるジョブ型雇用が都合がよいのです。
ジョブ型雇用が普及することで、求職者にとってどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
AIやVRなど、専門スキルを持っている人は、そのスキルだけで仕事に就けますし、入社した後も自分の得意な分野だけ仕事ができます。ニーズの高い職種であれば、いくらでも働き口があるため、自分の働きやすい環境を選びやすいでしょう。
ジョブ型雇用の場合は、契約時に自らの職務を提示することができるので、契約にない仕事をする義務はありません。そのためジョブローテーションもないため、自分の得意分野に集中でき、より自分の専門スキルを高めるでしょう。
ジョブ型雇用の場合、年齢や学歴などで判断されることがないため、スキルさえ高めれば条件をよりよくできます。給与が上がるだけでなく、在宅ワークなど労働環境に関しても融通が効くようになるかもしれません。スキルを高めてより高待遇に会社に転職することも可能です。
全ての仕事がジョブ型雇用になることはないでしょうが、これからジョブ型雇用で働く人は増えていくでしょう。もしも、専門スキルで食べていきたい人は、それを前提にキャリアプランを立てるのもありです。全て自分の責任でスキルを磨かなければいけませんが、その覚悟がある人におすすめの働き方だと言えます。
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